AIに任せられる業務の見分け方|何から始めるかで迷わない4つの判断軸

「AI活用を進めろと言われたが、何から手を付ければいいのか分からない」
「ツールの比較記事は読んだ。でも自社のどの業務に使うかが決まらない」
「試しに触ってはみたが、結局いつもの仕事に戻ってしまった」

AI導入がうまくいかない原因の多くは、ツール選びではなく対象業務の選び方にあります。合わない仕事を選ぶと、どんなに優れた道具でも成果は出ません。

この記事では、AIに任せる業務をどう見分けるかを4つの判断軸に整理します。当社が自社の現場で6つの業務に導入してきた経験から、うまくいったものと、そうでなかったものの違いを書きます。

4つの判断軸

対象業務を選ぶとき、次の4点を見ます。すべてを満たす必要はありませんが、当てはまる数が多いほど成功しやすくなります。

判断軸向いている向いていない
①頻度毎日・毎週など繰り返し発生する年に数回しか発生しない
②手順の明確さやり方が決まっていて、人に説明できる担当者の勘や経験に依存している
③結果の確認方法合っているかを数字やルールで確かめられる正解がなく、良し悪しの判断が主観的
④失敗したときの影響間違いに気づけて、やり直しがきく間違えると取り返しがつかない

このうち、見落とされやすいのが③の「結果を確認できるか」です。

AIは、もっともらしい間違いをすることがあります。人が全件を見直すのであれば、自動化した意味が半減してしまいます。そこで重要になるのが、機械が出した結果を機械で検証できるかどうかです。

たとえば請求書の読み取りなら、抽出した明細の合計と請求書の合計金額を突き合わせれば、正しく読めたかが自動で判定できます。この確認手段があるかないかで、実運用に乗るかどうかが大きく変わります。

最初の1つをどう選ぶか

判断軸に照らして候補が複数挙がったら、次の条件で絞り込みます。

小さいこと

「経理業務全体」ではなく「請求書PDFから明細を抜き出す」まで絞ります。大きなテーマから入ると、検討している間に熱が冷めます。1〜2週間で結果が見える大きさが目安です。

毎週あること

頻度が低い業務を選ぶと、効果を実感する前に忘れられます。毎週目にする業務なら、少し楽になっただけでも「効いている」と分かります。社内で広げるときの説得材料にもなります。

失敗しても困らないこと

最初から基幹業務や、顧客に直接届くものを選ばないほうが無難です。社内で完結し、間違えてもやり直せる業務から始めると、安心して試行錯誤できます。

担当者が困っていること

経営側が「無駄そう」と思う業務と、現場が「つらい」と感じている業務は一致しないことがあります。実際に手を動かしている人が困っている業務を選ぶと、協力が得られて定着しやすくなります。

当社が実際に選んだ業務

参考までに、当社が自社の現場で取り組んできた業務を挙げます。いずれも発送代行の実務のなかで生じていたものです。

業務選んだ理由
宛名データの表記ゆれ・環境依存文字の確認毎回発生し、手順が明確。誤りが印刷事故につながるため確認の価値が高い
請求書PDFの読み取りと検算毎月発生。合計金額との突き合わせで結果を自動検証できる
郵便局へ提出する書類の作成台帳から転記して計算するだけの定型作業。ルールが明確
各社から届く検査データの集約受信・保存・結合という手順が完全に決まっている

共通しているのは、手順が決まっていて、毎回発生し、結果を確認する手段があるという点です。逆に、企画の方向性を決める、取引先と条件を交渉するといった業務は対象にしていません。

よくある3つの失敗

① テーマが大きすぎる

「営業のDX」「バックオフィスの効率化」といった単位で始めると、何をもって完了なのかが決まらず、検討だけが続きます。作業の名前で言えるところまで小さくします。

② 完全自動化を目指す

例外まですべて機械に処理させようとすると、作り込みが際限なく膨らみます。大半を自動で処理し、判断に迷うものだけを人に回す設計のほうが、早く形になり長く使えます。

③ ツールから決める

先に道具を決めると、その道具でできることに業務を合わせることになります。順序としては、対象業務を決めてから、それに合う手段を選びます。多くの場合、すでに社内にある仕組みを組み合わせるだけで足りることも少なくありません。

誰を巻き込むか

対象業務が決まっても、進め方を誤ると社内で止まります。技術よりも、こちらのほうが難所になることが多いのが実情です。

関わる人は、おおむね3種類に分かれます。

役割気にしていること伝えるべきこと
実際に手を動かす担当者自分の仕事がどうなるのか面倒な部分が減ること。確認の役割は残ること
承認する立場の人費用と、間違いが起きたときの責任対象範囲と、人が確認する条件
情報システムの担当者データの扱いと既存システムへの影響どこにデータが流れるか、既存の仕組みを変えるか

担当者を最初に巻き込む

上で決めて下ろす形にすると、たいてい定着しません。その業務の例外パターンを一番知っているのは、毎日その作業をしている人だからです。例外を知らないまま設計すると、運用開始後に「これでは使えない」となります。

実際、当社で宛名データの確認を自動化したときも、どういう文字が化けやすいか、どこを見落とすと事故になるかは、現場の知見がなければ設計できませんでした。

「仕事を減らす」ではなく「面倒を減らす」

説明の仕方で受け止め方が変わります。「この業務を自動化する」と言えば、自分の仕事がなくなる話に聞こえます。「毎回の転記をやめて、確認だけにする」と言えば、面倒が減る話になります。

実際、多くの場合は後者が正確です。判断や例外対応は人に残り、機械が引き受けるのは繰り返しの部分だからです。事実として何がどう変わるのかを、そのまま伝えるほうが誤解を生みません。

小さく作って、見せる

資料で説明するより、動くものを1回見せるほうが早いことがあります。完成度が低くても、自分の担当業務が実際に処理される様子を見ると、話が具体的になります。「ここは違う」「この場合はどうなる」といった指摘が出てくれば、それが設計の材料になります。

効果をどう測るか

着手前に、対象業務に月何時間かかっているかを数えておきます。これをしておかないと、後から「楽になった気がする」以上のことが言えません。

測るのは、作業時間そのものだけではありません。「確認のために何度も見直す回数」「担当者しかできない状態になっているか」といった点も、改善の対象になります。時間は変わらなくても、特定の人にしかできなかった業務が他の人でも回せるようになれば、それは十分な成果です。

よくあるご質問

Q. 社内にAIに詳しい人がいません。それでも始められますか?
A. 始められます。最初にやるのは技術的な作業ではなく、業務の棚卸しと対象の選定です。ここは自社の業務を知っている方のほうが適切に判断できます。

Q. 新しいツールを導入する必要がありますか?
A. 必ずしも必要ありません。すでに使っている仕組みをつなぐだけで解決することも多くあります。まずは今ある道具で何ができるかを見てから判断することをおすすめします。

Q. 個人情報を扱う業務は避けたほうがよいですか?
A. 避ける必要はありませんが、データを外部に送信しない設計にすることが前提になります。考え方は個人情報をAIに渡さずに業務を自動化するで解説しています。

Q. 現場が新しいやり方に前向きではありません。
A. 現場が「つらい」と感じている業務から選ぶのが有効です。仕事を取り上げる話ではなく、面倒な部分を減らす話として始めると、受け止められ方が変わります。

まとめ

AIに任せる業務は、①頻度が高い ②手順が決まっている ③結果を確認できる ④失敗してもやり直せる、の4点で見分けます。とくに③の確認手段があるかどうかは、実運用に乗るかを左右します。

最初の1つは、小さく・毎週あり・失敗しても困らず・担当者が困っている業務から選びます。大きなテーマから入る、完全自動化を目指す、ツールから決める——この3つは避けたほうが無難です。

当社は年間3億通のDMを扱う発送代行会社で、自社の現場で複数の業務をAIに置き換えてきました。うまくいったものも、期待したほどではなかったものもあります。AI業務改善の伴走支援では、その経験をもとに、御社のどの業務から手を付けられるかを一緒に整理しています。具体的な進め方の例は請求書処理をAIで自動化するもご覧ください。

RELATED SERVICE

AI業務改善の伴走支援

自社の現場でAIを使い倒してきた会社が、御社の業務改善に伴走します。

サービスを見る

この記事をシェアする

facebookにシェア twitterにシェア